卒業生INTERVIEW

夢や目標を持つ人にとって、北陸中学はゴールへの一番の近道。

vol.6

黒田 万智さん

東京大学 大学院
農学生命科学研究科 獣医学専攻
獣医生理学研究室 博士課程3年

文殊小学校卒業。2010年、北陸学園卒業(7期生)。東京大学に入学し、 3年次から獣医学課程獣医学専修に所属。2016年、東京大学大学院に入学し、現在、脳の興奮の制御についての研究に携わっている。

北陸中学校に入学した理由を教えてください。

理由は2つあります。ひとつは2歳年上の兄が北陸中に通っていて、小学校の時よりものびのび過ごしているのを見て、自分らしくいられる学校なんだろうなと感じたことです。もうひとつは、小学生なりに漠然と「このまま地元の中学に進むこともできるけれど、それよりも新しいところに行った方がいろんなことができるのではないか」と思ったことです。
実際に入学すると、1クラス20人の少人数に驚きました。お互い仲良くやっていこうという気持ちの強い同級生に恵まれ、担任もやさしく包みこんでくださる素敵な先生で、本当に良いところにきたなと思いました。

ニュージーランドの語学研修はどうでしたか。

カルチャーショックでした。語学力を高めるのに大きなプラスになったことももちろんですけど、文化が違うことが衝撃的でしたね。ホームステイ先の家族は週末婚という形をとっていて、父親と子どもの苗字が違いました。当時の私は、世の中には様々な家族の形があることを、頭でしか知らなかったので、とてもビックリしたんです。ですが、そのおかげで物事を良い・悪いじゃなく「そういう考え方もあるんだ」と素直に受けとめられるようになりました。中学生という柔軟性にあふれる時期に、海外の方とふれあう経験をしたおかげで、大学でも海外の方と英語でスムーズに異文化交流できるようになりました。本当に行って良かったと思います。

将来のことはいつ頃から考えていましたか。

獣医になりたいとぼんやり考えだしたのが小学生からで、将来の夢が明確になったのは中学1年生の頃です。飼っていた犬が、予防接種をしておけば防げた病気で死んでしまったんですね。「自分が病気にかからないように飼ってあげられたら」と思ったのがきっかけで、動物を助けてくれる獣医さんの存在を知りました。あと、「そもそも、動物ってどうして病気になっちゃうのかな」と思ったんですね。当時から動物に興味があって、どうしても動物と直接関わりたいと思ったんです。

大学の進路は、いつ頃から考えていましたか。

「北陸中は高校受験がないから、早いうちに大学の進路を考えた方がいいよ」と、当時の校長先生に言われていました。校長先生と個人面談をする機会があり、そこで「北海道大学に行くと獣医になれるらしいので、そこに行きたい」と話すと、「それは本当に君が行きたいところなのかな。大学は北海道大学だけじゃなく、北から南まであちこちにたくさんあるんだよ」と示してもらったなかに、東京大学がありました。

そこから東大を目指すようになったのですか。

「東京大学」という名前がストーンと叩き込まれたそのときから、漠然と意識にはありました。中3の時の模試で自分でもびっくりするくらい良い成績が取れて、「このまま頑張れば東大にいけるかも?」という気持ちで北陸高校に進学しました。そのときの担任の先生が「東大に行きたいなら、行けばいいじゃないか」と言ってくださって、同時に、私を含めて内進クラスの同級生4人が奨学生になり、目標がはっきりと東大になりました。

友だちの存在は、励みになりましたか。

勉強って閉塞的で、いつまでやってもゴールが見えないのですが、身近に負けられない相手がいる感じでとても刺激をもらいました。お互いの力を認めあって、足を引っ張りあわず高めあえていけたのは、改めてすごいと思いますね。そのときの一人は私と同期で東大に入り、今は農林水産省で官僚をしています。もう一人は、一浪して東大に入りました。残る一人も福大の医学部に入り、今は医者になっています。

東大合格に向けて、自分なりの勉強法はありましたか。

私自身は頭がキレるタイプではないので、まずは学校で出る宿題はきちんとやろうと決めていました。英検は中学のときに2級を、高校生のときに準1級を取得しました。私は理系だったのに数学と理科が苦手で本当に苦労したんですが、足りないところを補ってくれたのが英語でした。

北陸学園の英語教育の良さを教えてください。

英語への入口のハードルをとにかく下げてくれるということですね。理系は何をどれだけ知っているのかが重要なのですが、英語は言葉としてのハードルを低く感じれば感じるほど勉強しやすいと思うんです。だから、とても助かりました。
実際、英語はとても大事です。国際的な情報発信やプレゼンテーションは当然英語で行われますし、実験道具の説明書や研究分野の専門書はすべて英語で書かれています。中学生の皆さんには、将来を見すえて英語を頑張ってほしいです。

中高一貫教育を振り返って、どんな良さがありましたか。

いろいろな良さがあると思いますが、特に2つあって、1つ目は私みたいになにか目標を持っている人には、ゴールへの一番の近道になるだろうということです。中学と高校の間に受験を挟むと、受験準備のために半年近く費やされて、その分、夢を追いかける時間が少なくなってしまいます。中学生でも目の前の勉強に追われるだけでなく、「夢を追いかけていいんだよ」という余裕を与えてくれたと思います。
2つ目の良さは、逆に目標を持っていない人にとってもいい環境だということです。先生方が中学・高校を通してずっと面倒を見てくださって、一人ひとりに合った指導を加えてくださいます。その過程で、自分が本当に目指したいものは何かを考えることができました。私自身、おっとりしているけれど自分の大事なところは譲れない、プライドの高い性格をしています。北陸中学は、むやみにそれを矯正するのではなく、私の個性を大切にしつつも将来のことを考える、すごく大事な時間をくれました。

北陸学園での6年間で得たものを教えてください。

まず、同級生たちから教わったのは、人の意見を尊重する、他人にやさしくするということです。宗教の時間に学ぶ浄土真宗の教えも、最終的にはそこに行きつくのかなと思います。
それから、新しいことへの挑戦は無駄じゃないということです。ニュージーランド語学研修もそうだし、そもそも中学受験をして進学することだって挑戦です。挑戦の一つひとつは絶対に無駄にならないし、仮に失敗したと思うことでも、後で振り返るとプラスだったことに気づくので、いろいろ挑戦してみることが大事だよと伝えたいです。

東大での学びを教えてください。

東大は最初の1年間、「あなたは本当に何をやりたいの?」と迷える期間があります。一般的なことを学んでから自分の専門を決めるシステムで、理系で入学しても文系に進むことができるんですね。
ただ、そこで私は「本当に獣医さんになりたいんだろうか」って路頭に迷ってしまったんですね。実家が農家なので稲の研究も良いなとか、生物がメインではあるんですが、どこにいこうか迷っちゃった。それで、いろんな人に相談して、獣医という国家資格があれば、なにかあっても自分の役に立つんじゃないかと家族に言われ、農学部のアグリカルチャーで、専修課程は獣医学課程獣医学専修に進みました。

そこから、今度は大学院に進むことになるのですね?

自分の性格とやりたいことに立ち帰ってみると、職業としての獣医は自分に向いてないと思っちゃったんです。動物を助ける立場にはありたいけど、自分が繊細すぎて飼い主さんが大事にしてた動物が死んじゃったとき耐えきれないなというのと、私の満足感はもう少し違うところにあるんじゃないかなと考えるようになったんです。大学3年の冬頃に「新しいことを発見してそれを発表する立場の方が、達成感が感じられるんじゃないかな」と気づき、大学院に進むことを決めました。

今取り組んでいる研究について教えてください。

現在は、脳の興奮を制御するしくみについて研究していて、この研究成果が、人や動物が年をとったときに起こる認知症の発症プロセスの解明にもつながっていったらいいなと思っています。
研究というプロセス自体は、皆さんが思い描いているものよりもはるかに辛く、心がボキボキと折られるようなものです(苦笑)。1カ月かけて手塩にかけたものが「はい、無駄でした。次!」という繰り返しで、100、200、300、1000と失敗を積み重ね、たった一つの新しい発見に辿りつくかどうかです。その新しい発見も、検証のためにまた数えきれないほどの実験をし、全然うまくいかないなかでようやく一つ新しい発見があって、・・・でもそれがたまらないんですね(笑)

これからの目標を教えてください。

一番近くの目標でいえば、今の研究をどんどん進めていって世の中の役に立ちたいです。研究テーマで成果を残し、最終的には自分が満足ができる人生にしていきたい。甘いかもしれないですが、自分が楽じゃなくてもいいから、なにかをやり遂げたなという人生であってほしい。あまりきつすぎるのも嫌ですが(笑)。就職後も研究を続け、新しい発見につながるような小さな小さな発見をたぐっていきたいですね。

最後に、未来の後輩にメッセージをお願いします。

北陸中に入ったから大丈夫と安心するのではなく、今日よりも明日、明日よりも明後日と、より良くしていこうというステップが大事かなと思います。実際、私は北陸中がすごく好きですが、いつが一番幸せでしたかと聞かれると、「今」と答えます。辛さでいえば圧倒的に「今」で、楽しさも「今」ですよと(笑)。ひとつひとつのステップを大事にしていって、最終的にもっと楽しい方向に進める、そのひとつのステップとして北陸中があるんじゃないでしょうか。