卒業生INTERVIEW

iPS細胞が無限に増殖するように、北陸中では夢が無限に広がる。

vol.5

笠原 朋子さん

京都大学 iPS細胞研究所
増殖分化機構研究部門
長船研究室 研究員

2003年
北陸中学校卒業(3期生)
2011年
上智大学 理工学部化学科 卒業
同年4月
京都大学大学院医学研究科
修士課程 入学
2017年
京都大学大学院医学研究科
博士課程 修了

ノーベル賞•山中伸弥教授が所長を務める京都大学iPS研究所にて、腎臓再生の研究に従事。2012年、日本腎臓学会学術総会 会長賞受賞。2017年6月、ボストンにて行われた「International Society for Stem Cell Reserch」(国際幹細胞学会)にて論文を発表。

北陸中に入学したきっかけを教えてください。

両親が中高一貫教育に興味があり、北陸中を勧められました。私はひとりっ子なので、クラスメイトと兄弟のように接していける、少人数制で6年間同じクラスという環境はすごく良かったです。
あと、ニュージーランドに語学研修に行けるところが最大の魅力でした。3歳から英語を習っていて、もともと海外に興味があったんです。外国人の方に習っていたので、英語は身近な感じで、いつか海外に行ってみたいと思っていました。

北陸中での中高一貫教育はどうでしたか。

中学のときから、高校で習う内容を先に学べるのが良かったです。それに、高校でも同じ先生方に教えていただけるので、教育の一貫性がある気がします。先生と距離が近く、よく気軽に職員室に遊びに行っていました。先生も家族みたいな感覚で、なんでも相談できました。卒業後も、変わらず学校にいてくださるので、今でも会いに行けるのがうれしいです。

ニュージーランド語学研修はどうでしたか。

中学2年生のときジュニア大使でシアトルに行った経験はあったのですが、そのときとは違う貴重な経験ができました。初めて一人でホームステイをして、現地の生活の中で同世代の方とふれあうのは新鮮で楽しかったです。そんな風に英語を学ぶ機会は、当時の自分にとっては刺激的な出来事でした。今でも、当時お世話になった人と交流があります。
ニュージーランドでは、自分から話しかけてコミュニケーションをとるという積極性を学びました。研究では国際的な交流が多く、外国の人とコミュニケーションをとったりディスカッションをしたりするときに、それが役立っているなと感じます。

北陸中で、印象に残っていることは何ですか。

担任の中村先生に、ニワトリの解剖をする体験学習に連れて行ってもらったことです。もうそんな体験学習はないようですが、先生が理科の先生だったので、興味を広げてほしいと生徒を募って、男子1人女子2人で行って、とても感動して帰ってきたのを覚えています。
解剖したニワトリの中がすごくきれいで、そのときはまったく怖いとか思わず、強く興味をひかれました。そんな風に、いろいろな体験をさせてもらった北陸中の環境が、今の自分につながっているのかなと思います。

北陸中で得たものが、今も生きているのですね。

本当にそうです。中村先生がよく仰っていた「ポジティブマインド」と「ビジョンを持って全力で楽しめ」という言葉も、そのひとつです。
中村先生には中高6年間と担任をしていただいたのですが、ずっとこの精神を説き続けていらっしゃいました。今もその精神は私の中で生きていて、研究結果が悪くても「ポジティブマインド」という言葉を思い出して続けていけます。先生との出会いは、本当に大きいものでした。

現在のお仕事について教えてください。

京都大学iPS細胞研究所に入所して、7年目になります。メンバーは25人いて、精力的に研究をしています。臓器ごとに研究室は分かれているんですけど、実験室としては壁がないので、違う臓器のことを教えてもらうなど交流があります。

iPS細胞は様々な臓器に分化誘導できるあかちゃんのような細胞として知られていますが、私はそのiPS細胞から腎臓再生に向けて、いろんな腎臓構成細胞のもととなる腎臓前駆細胞を分化誘導しています。そもそも腎臓の病気は透析などの対症療法だけで、根幹的な治療法がなく完治が難しいので、それをなんとかしたいと思っています。成果報告といわれるディスカッションでは、ノーベル賞を受賞された山中伸弥教授の前で発表を行います。

お仕事で、大変なことはなんですか。

腎臓は20種類くらいの細胞があり、それを全部iPS細胞からつくらないといけないので、「もう無理なんじゃないか」って自分で思うくらい難しいです。研究はうまくいくことの方が少ないので、一喜一憂してはいられません。本当になかなか成果が出ない分野なので、しょっちゅうやめたいって思います。そんなとき、中村先生の「ポジティブマインド」と「ビジョンを持って全力で楽しめ」という言葉を思い出して、自分を奮い立たせています。

朝9時から夜の9時までずっと研究で、毎日、細胞の世話をしないといけないので365日ほぼ毎日行っています。お正月は交替で休むのですが、細胞に飼われている感じです(笑)。腎臓学会の優秀賞を受賞し、今度ボストンの国際幹細胞学会に論文発表に行くのですが、学会が旅行みたいなものなので楽しみです。

プライベートはどう過ごしていますか。

気晴らしは、美味しいものを食べること。京都には美味しいものがいっぱいあって、自転車で路地に入って美味しいお店を開拓したりしています。普段はトレーナーにデニムのような格好で、お洒落は全然です(笑)。

これからの目標を教えてください。

iPS細胞は「夢の細胞」と言われていますが、それが夢じゃなくなる日がきっときます。今は、再生医療を身近な医療にするための手助けができればいいなと思っています。いつか腎臓病の患者さんを治したいとの思いで頑張っています。

北陸中を目指す子どもたちにメッセージを。

中学・高校って、自分の夢はなんだろうって考える時期だと思うんですけど、北陸中にきて豊かな環境や先生方に出会えると、こんな職業があるんだって知ることができ、自分の夢がもっともっと広がっていきます。それから、語学留学ができるので、視野を広く持てる人になれるんじゃないかなと思います。

山中教授もよく「ビジョン」と仰るのですが、中村先生の言葉のように「ビジョンを持って全力で楽しめ」ば、「夢の細胞」と言われるiPS細胞と一緒で、どんな夢も現実になる日が必ずくると信じています。それを叶えるため、夢を持つための一歩となる環境が充分に備わっているのが北陸中だと思います。